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感覚記憶とは?短期記憶・長期記憶との違いや日常の具体例まで解説

感覚記憶とは、 わずか1〜2秒間だけ保持するもっとも短い記憶のことです。対象となるのは、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚で得た情報です。
私たちは日常生活で膨大な情報に囲まれながらも、必要な情報だけを選択して記憶しています。この記憶の最初の段階にあるのが「感覚記憶」です。
今回は感覚記憶とは何か、どのような仕組みとなっているのかを日常の具体例も含めて紹介します。
目次
感覚記憶とは?
感覚記憶(Sensory memory)とは、情報を1〜2秒間だけ一時的に保持する記憶のことです。記憶全体の最初の段階を担っており、以下の五感で受け取ったそのままの情報を得たと認識せずに自動的に処理します。
- 視覚
- 聴覚
- 触覚
- 味覚
- 嗅覚
感情記憶に保持した膨大な情報は、意識して注意を向けた一部の情報のみが次の段階である短期記憶へと移行する仕組みとなっています。この選別機能により、私たちは情報過多による混乱を防ぎながら、必要な情報だけを効率よく処理できるのです。
感覚記憶と短期記憶の違い
感覚記憶と短期記憶の主な違いは、情報の保持時間です。感覚記憶の保持時間は1〜5秒程度ですが、短期記憶は15〜30秒程度持続します。この時間差により、感覚記憶は瞬間的な情報保持を、短期記憶は一時的な作業記憶を担当しています。
また、感覚記憶で選別した情報を短期記憶ではより長く保持し、必要に応じて処理するのが基本の流れです。そのため、情報の容量で見ると感覚記憶のほうが大きく、短期記憶はより少ない情報を意識的に処理するという違いもあります。
感覚記憶と長期記憶の違い
感覚記憶と長期記憶の主な違いも、情報の保持時間です。感覚記憶は1〜5秒の極短時間で大容量、生の感覚情報を自動処理します。一方、長期記憶は数か月から一生にわたって情報を保持できます。
記憶は、感覚記憶から先ほどの短期記憶、そして長期記憶へと情報が”選ばれながら”進んで記憶として紡がれていきます。私たちはこの段階的な処理が備わっているからこそ、必要な情報だけを選定して長期間にわたって保持できるわけです。
【関連記事】 匂いで記憶がよみがえる「プルースト効果」とは?香りと脳の関係をわかりやすく解説
脳で感覚記憶が担う役割

感覚記憶は「大量の刺激を一時的に保持し、そのなかから必要なものだけを短期記憶に送るフィルターの役割」を担っています。ここまで触れた短期・長期記憶に加えて、中期記憶も含めてまとめると以下のような流れで脳が効率よく情報処理を行っています。
記憶の段階 | 保持期間 | 説明 |
感覚記憶 | 0.5〜数秒 | 見たもの・聞いたものなど、五感から入ってきた刺激を一瞬だけ保持する。「重要そうだ」と判断した情報だけが次の段階に進む。 |
短期記憶 | 数十秒〜1分 | 選ばれた情報を保持する。情報を何度も繰り返すと記憶が安定し、中期記憶に延長する。 |
中期記憶 | 数時間〜数週間 | 短期記憶よりも定着する。「テスト前に覚えた内容」が典型例で、一定期間が過ぎると忘れる。 |
長期記憶 | 数か月〜一生 | 中期記憶から重要だと判断した情報だけを長期間にわたって保持する |
要するに、「大量の刺激 → フィルタリング → 一時保持 → 必要に応じて強化 → 長期保存」という流れで、求める情報だけ残す仕組みになっている、ということです。日常生活のなかで想像だにしないほどの情報を段階的に整理できれば、必要な記憶としても定着するのです。
情報過多による混乱も防ぐ
インターネットが普及し、何かと情報量が増えた昨今でも、感覚記憶の役割は健在です。感覚記憶は、保持した情報のなかから注意を向けられた部分のみを短期記憶に転送するような仕組みになっているのはすでにお伝えしたとおりです。
この一種のフィルタリングと呼べる機能によって、余計な情報を削ぎ落とし、脳の処理能力を効率よく活用して情報過多による混乱を防いでいるわけです。現代社会ではネットの普及によって情報量は非常に増えていますから、感覚レベルでの情報選別機能がますます重要になっています。
感覚記憶の代表的な2つの種類

感覚記憶は、さらに分解すると主に視覚系と聴覚系の2つにわけられます。それぞれ保持時間や特徴が異なるため、詳しく見てみましょう。
アイコニックメモリ
アイコニックメモリ(Iconic memory)は視覚を基軸とする感覚記憶で、目で見た情報を約1秒間保持します。視野全体の情報を一度に保持できて映画のフィルムが連続的に見える、日常で「まばたき」の間も視覚情報が途切れないなどはすべてこの働きによるものです。
この記憶は容量が大きめでほぼ視野全体をそのまま保存できますが、持続時間が極端に短くなります。そのため、脳はそのなかから「必要そうな情報」だけを短期記憶に送り、一瞬の情報から必要箇所を切り抜いて保存できるようにしています。
エコイックメモリ
エコイックメモリ(Echoic memory)は聴覚を基軸とする感覚記憶で、聞いた音や言葉を2〜5秒間保持します。アイコニックメモリと比較して、より長く持続するという特徴があります。集中しているときに呼びかけられても、少し遅れて「何ていった?」と聞き返す前に内容を理解できるのは、エコイックメモリが音声を保持しているからです。
通常、聴覚情報は時間的に連続して流れるため、数秒間の保持がないと意味のある「まとまり」として処理できません。言葉の音を「短い録音のように」脳に残す仕組みであるエコイックメモリがあるからこそ、文章や会話を途切れず理解できているのです。
感覚記憶の日常生活における4つの具体例

感覚記憶は、私たちの日常生活のあらゆる場面で働いています。ここまでもいくつか例を挙げましたが、もう少し具体的にどのような場面で活用できるのか4つの例で紹介します。
映画やまばたきでも世界が途切れない
感覚記憶は、途切れた刺激をなめらかな経験へとつなぎ合わせる働きを持っています。静止画を連続して繋げた映像は映画として滑らかに見えますし、「まばたき」をしても目から入った情報は途切れず継続しているはずです。
こうした日常生活はアイコニックメモリが前後の情報を橋渡ししており、瞬間的な「写真」を現実を途切れない『映像』として体験できるようにしているのです。パラパラ漫画を描いて実際に動かしてみると、動画のように見えるといえばわかりやすいのではないでしょうか。
クラクションや異常な匂いに反応できる
感覚記憶は学習や知覚の基盤であると同時に、生存に直結する役割も果たしています。あくまで例ですが、以下のような情報は危険を察知するために瞬時に脳へと伝達します。
- 車のクラクション
- 背後からの急な動き
- 焦げた臭い
そうすると、臭いと同時に記憶したイメージ(映像)を私たちは反射的に思い出し、危険を回避できるのです。要するに感覚記憶は、環境の変化を捉え必要な注意を引き起こす、身体の安全装置といえる存在となっています。
教科書や講義内容を覚える
学習で扱う文字や音声、観察した映像は、すべて最初に感覚記憶に取り込まれます。この段階で適切に記憶へ保持できなければ、短期記憶に送られず学習は右から左へ情報が流れるだけで「勉強」が成立しません。
例えば、「授業中に集中していないときの内容が頭に残っていない」のは、感覚記憶が情報を保持できていないからです。学びの入口としての役割を果たしており、情報の質を左右して知識を定着できるかにおいても大切な役割を果たしています。
広告やブランドメッセージを記憶に残す
広告やブランドメッセージは、一瞬の接触でも感覚記憶に刻まれ、後の購買行動や印象の形成に影響を与えます。アイコニックメモリやエコイックメモリへは、テレビCMのロゴや短いフレーズ、SNSのスクロール中に流れる映像も保存するためです。
だれでも、たった1回きりの瞬間的な記憶だけでは忘れてしまいます。しかし、何度も繰り返して見続けると無意識に記憶へ蓄積し、消費者は無意識にブランドを想起しやすくなり広告効果が高まるのです。
視覚・聴覚の感覚記憶と同時に重要な『香り』

ここまで紹介した感覚記憶と同時に、ビジネスシーンで見逃せないのが『香り』に関する記憶です。視覚・聴覚に続いて嗅覚もまた強く記憶と結びついており、ときとして深くその人の心に刻まれます。
例えば、特定の香りを嗅ぐとそれに結びついている記憶や感情を思い出したという経験はないでしょうか。こうした過去の出来事や感情を呼び起こす現象はプルースト効果と呼ばれ、近年ではビジネスに応用するケースも見られるようになりました。
視覚や聴覚による情報は何度も繰り返して伝えるものですが、そのタイミングは限られます。一方で香りなら、一度相手に届ければ持続期間中ずっと働きかけてくれる“自動で繰り返す広告”のような存在として非常に有用です。
【関連記事】 プルースト効果ってどのような現象なの?活用できる方法と一緒に解説
香りの記憶をビジネスに活かす香り印刷
香り印刷とは、インクや特殊な加工技術を用いて紙に香りを付与する印刷方法のことです。香りは、あらかじめ香料を混ぜ込んだマイクロカプセルを印刷面に塗布して付与するため、指でこすったり、温度や圧力が加わったりすると広がります。
この特性により、プルースト効果をマーケティングや販促へ手軽に取り入れられるわけです。これまで使っていたチラシやハガキ、パンフレット、名刺などの日常的な印刷物を「見るだけでなく香りでも体験できる媒体」に変えることも可能です。興味があれば、ぜひ下記ページから詳細をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
最後に、感覚記憶について、よく寄せられる疑問にお答えします。
感覚記憶と即時記憶の違いは?
感覚記憶と即時記憶の違いは、学問分野での記憶分類にあります。感覚記憶(心理学分野)は、感覚器官で受けた情報を約1秒以内(視覚)、数秒(聴覚)だけ一瞬保持する記憶です。
一方、即時記憶(臨床神経学分野)は、情報の記銘後すぐに想起するもので、想起までに干渉を挟まない記憶を指します。このように心理学では保持時間で区分するのに対し、臨床神経学では記銘から想起までの干渉の有無で規定している違いがあるのです。
感覚記憶はどのくらい保持されますか?
感覚記憶の保持時間は、感覚の種類により異なります。例えばアイコニックメモリであれば約1秒、エコイックメモリは2〜5秒程度だといわれています。
- 映画やまばたきでも世界が途切れない
- クラクションや異常な匂いに反応できる
- 教科書や講義内容を覚える
- 広告やブランドメッセージを記憶に残す
など、多少の個人差はありますが、この短い時間のなかで脳は膨大な感覚情報を処理し、重要な情報だけを次の段階である短期記憶へと送っています。
感覚記憶の具体例は?
感覚記憶の具体例は、日常生活であれば以下のような現象が挙げられます。
- 映画のコマ送り画像が滑らかに見える
- まばたきをしても視覚が途切れない
- 話に集中しても呼びかけに遅れて気づける
- 雷の光のあとに音が聞こえる
いずれも、感覚から得た情報が記憶として処理する最初の段階を実感できる例で、すでにご経験の方も多いはずです。もっとも身近な例で知りたい方は、ぜひパラパラ漫画を作って試してください。
まとめ
感覚記憶は、視覚・聴覚・嗅覚などの五感から得た情報をわずか1〜2秒間だけ保持する記憶の最初の段階です。この短時間のなかで、脳は膨大な情報から必要なものだけを選別し、短期記憶へと送る役割を果たしています。
情報があふれる現代社会において、感覚記憶の仕組みは情報を覚えたり、取捨選択を円滑にしたりするなどの機能は私たちになくてはならない存在です。また、コミュニケーションやマーケティング戦略を考えている方は、ぜひ感覚記憶と同時に香りにもぜひ目を向けてみてはいかがでしょうか。
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香りの印刷所プルースト編集部
この記事は、香りの印刷所プルーストを運営している久保井インキ株式会社のプルースト編集部が企画・執筆した記事です。
香りの印刷所プルーストでは、香りの印刷をテーマにお役立ち情報の発信をしています。