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香料の会社はどこがある?主要メーカーや事業領域・新たな香りビジネスも解説

朝のコーヒーの香り、お気に入りの香水、洗濯したての衣類の爽やかな香り—。すべて香料の会社の技術によって生み出されており、「良い匂い」以上の価値を持ち、製品の個性や魅力を高める重要な要因でもあるのです。
本記事では、日本の主要な香料会社とその事業領域、さらには新たな香りビジネスの可能性について解説します。香料業界に興味をお持ちの方、ビジネスに香りを取り入れたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
香料会社・メーカーとは
香料会社・メーカーとは、食品や飲料、化粧品、日用品などに使用される香りの成分を研究・開発・製造する企業のことです。天然由来の香料と化学合成による香料の両方を扱い、顧客企業の要望に応じた香りを創出しています。
香料会社の特徴は、長年にわたって蓄積された調香技術と科学的知見を組み合わせ、消費者の嗜好や市場トレンドに合わせた香りを提供できる点です。
調香師(パフューマーやフレーバーリスト)と呼ばれる専門家を擁し、独自の香りを作り上げる自社のノウハウも活用して、日々新しい香りの可能性を探求しています。また、製品開発のパートナーとしての役割も担っており、顧客企業と緊密に連携しながら新製品の開発もサポートしています。
香料が使われる主な製品分野
香料は私たちの生活のあらゆる場面で使用されています。主な製品分野は以下のとおりです。
- 食品・飲料:菓子、飲料、アイスクリーム、インスタント食品など
- 香水・化粧品:香水、ボディローション、化粧水など
- 家庭用品:洗剤、柔軟剤、芳香剤など
- 医薬品:シロップ剤、錠剤のコーティングなど
- タバコ製品:加熱式タバコ、電子タバコなど
共通しているのは、香料が製品の価値や魅力を高める要因として認識されていることです。食品メーカーであれば風味を高めるフレーバーを、化粧品メーカーであれば魅力的な香りのフレグランスを必要とするなど、業界によって香料に求められる役割は異なります。
香料会社が提供する価値
香料会社は、以下のような価値を顧客企業や最終消費者に提供しています。
- 独自の香りによって競合製品と製品を差別化する
- 特徴的な香りでブランディングを強化する
- 五感に訴える体験を創出し、満足度を高める
- 新しい香料成分や調合技術を開発する
香料会社の強みは、化学的な知見を活かした安全性の高い香料開発と、人間の感性に響く香りの創造を両立できる企業が業界をリードしている点です。消費者の嗜好や市場トレンドを的確に捉え、香りとして具現化する能力も価値の1つでしょう。
日本の主要な香料会社・メーカーは5社

ここでは、日本を代表する5つの香料会社について紹介します。
高砂香料工業
高砂香料工業は1920年に創業した日本を代表する香料メーカーで、世界28の国と地域に拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。高度な研究開発力と幅広い製品ラインナップを有し、1983年にはl-メントールの不斉合成技術の工業化にも成功しています。
ファインケミカルの分野では、最先端の不斉合成技術を用いた医薬品中間体や、電子製品やIT産業で用いられる機能性材料など、香料以外の分野でも高い技術力を発揮。日本の香料会社としては最大規模を誇り、世界市場でもトップ10に入る存在感を示しています。
長谷川香料
長谷川香料は1961年に設立された、飲料・食品向け香料に強みを持つ香料メーカーです。乳製品などのフレーバー系に高い技術力を有しており、家庭用品向け香料の製造も手がけるほか、東証プライム市場に上場しており、安定した経営基盤を持っています。
2020年には米国のMISSION FLAVORS & FRAGRANCES(ミッションフレーバーズ&フレグランス)を買収。従来の食品香料(調味料・ドレッシング等のセイボリー系フレーバー)に加え、スイート系のフレーバーを補完・強化するなど、積極的な事業拡大を進めています。
小川香料
小川香料は1893年の創業以来、日本最古の香料メーカーとしての伝統と技術を継承してきた香料会社です。日本の自然や四季、伝統文化に根ざした香りの開発が特徴で、日本産の農林水産物を活用した香料開発も手がけています。
自治体や生産者協同組合、企業との密接な連携により、日本各地の魅力的な農林水産物を活用した精油・エキスをはじめとする香料製品の開発・製造・販売を推進。「香りを通じて日本産農林水産物の魅力を国内外へ発信すること」を使命とし、地域の特産品を香りという形で世界に発信する取り組みは、地域振興にも貢献しています。
曽田香料
曽田香料は1915年創業の総合香料メーカーとして、香り文化の一翼を担ってきた会社です。「香料を通じた社会貢献」「企業としての充実と発展」「ステークホルダーへの適正配分による豊かな暮らし」を理念とし、一世紀以上にわたって培われてきた伝統と理念を大切にしています。
同社の製品ラインナップは幅広く、フレグランス、フレーバー、食品天然色素、天然香料、合成香料、ガス着臭剤の他、合成技術を応用したファインケミカルなど、多岐にわたる分野をカバーしています。研究開発にも力を入れており、食の総合処方提案など、顧客のニーズに応える取り組みにも積極的です。
稲畑香料
稲畑香料は1926年に創立された、100年以上の歴史を持つ老舗の香料メーカーです。稲畑勝太郎が京都にて稲畑染料店(現在の稲畑産業株式会社)を創業したのがはじまりで、のちに稲畑二郎が香料部の業務を承継する形で、合資会社稲畑香料店(現在の稲畑香料株式会社)が設立されました。
同社はフレグランス事業とフレーバー事業を主軸に展開しており、大阪府大阪市に大阪工場、茨城県常総市に関東工場を持ち、大阪工場ではフレーバー、フレグランスを、関東工場では食品の製品を製造しています。個人の持つ感性を大切にする企業文化に加え、1つひとつのものづくりの過程を大切にし、独自のフロンティアを拓き続けることで、顧客にとって価値ある製品を提供しています。
香料会社・メーカーの3つの事業領域
ここまでお伝えした香料会社・メーカーは一般的に、フレーバー事業、フレグランス事業、ファインケミカル事業という3つの主要な事業領域を持っています。以下では、各事業領域の特徴と対応製品についても解説します。
フレーバー事業
フレーバー事業は、食品や飲料の味と香りを創出する事業領域です。消費者の嗜好に合わせた風味を開発し、以下の領域で応用されています。
対応領域 | 例 |
菓子 | チョコレート、キャンディ、ガム |
飲料 | 清涼飲料水、アルコール飲料 |
冷菓 | アイスクリーム、シャーベット |
デザート製品 | プリン、ゼリー |
ベーカリー製品 | パン、ケーキ |
インスタント食品 | 即席麺、レトルトカレー |
レトルト食品 | パウチ食品 |
タバコ | 加熱式タバコ、電子タバコ |
フレーバー事業では、天然由来の香料と合成香料を組み合わせて、食品の風味を向上させたり、特定の味を再現したりします。フレーバーリストと呼ばれる専門家が中心となり、科学的分析と感覚的評価を組み合わせながら、魅力的な風味の開発に取り組んでいます。
フレグランス事業
フレグランス事業は、香水や日用品の香りを開発する事業領域です。感性に訴える魅力的な香りを創造し、日常生活から環境づくりに至るまで幅広く利用されています。
対応領域 | 例 |
香水 | オードトワレ、オードパルファム等 |
化粧品 | スキンケア製品、メイクアップ製品等 |
シャンプー | ヘアケア製品全般 |
ボディソープ | ボディケア製品全般 |
芳香剤 | 部屋用、車用等 |
洗剤 | 衣料用、台所用等 |
フレグランス事業では、パフューマーと呼ばれる専門家が中心となり、数千種類の香料素材から最適な組み合わせを見つけ出し、独創的な香りを創造します。近年は、環境への配慮、安全性への関心の高まりから、天然由来の香料素材を活用した開発や、アレルギー反応を引き起こしにくい香料の研究も進んでいます。
【関連記事】フレグランスの種類は何がある?香料・濃度・香り・形状の違いを徹底解説
ファインケミカル事業
ファインケミカル事業は、医薬品や機能性材料を提供する事業領域です。香料合成で培った高度な有機合成技術を応用し、高付加価値な化学品を開発・製造しています。
対応領域 | 例 |
医薬品原料 | 有効成分や添加物として使用される高純度の化学物質の提供 |
中間体 | 医薬品や化学品の製造過程で必要となる中間化合物の合成 |
電子製品用機能性材料 | 半導体や液晶ディスプレイなどに使用する特殊な化学物質の開発 |
特殊化学品 | 特定の産業用途に特化した高機能な化学物質の提供 |
ファインケミカル事業では、不斉合成技術や触媒技術など、香料合成で培った高度な有機合成技術が活かされています。高い技術力と品質管理能力が求められるため、参入障壁が高く、高い利益率を確保できる分野でもあります。
香料会社・メーカーの久保井インキ

僭越ながら、弊社の紹介もいたします。久保井インキ株式会社は、特殊インキの開発・製造を行う企業として、香料を活用した独自のビジネスを展開している会社です。弊社は一般的な香料メーカーとは異なり、香りをインキに閉じ込める技術を持ち、印刷物に香りを付与するという特殊な分野で事業を行っています。
弊社が開発した香料インキ「アロマテック」は、マイクロカプセル香料を使用し、印刷皮膜を擦ることでマイクロカプセルの中から香りが出てくるタイプのインキです。オフセット印刷が可能で、名刺やショップカード、ポストカード、チラシなどの印刷物に香りを付けることができます。
弊社では、この香り印刷技術を広く提供するために、以下の2つのサービスを展開しています。
香りの印刷所 プルースト
「香りの印刷所 プルースト」は、弊社が運営する香り印刷専門のオンラインサービスです。名刺やポストカード、しおりなど、さまざまな印刷物に14種類の香りから選んで印刷できます。
突然ですが、「プルースト効果」という言葉をご存知でしょうか?香りによって関連する記憶や感情が呼び起こされる現象のことで、文字や映像よりも効果的に相手に印象を残すことが可能です。例えば、「名刺を匂ってみてください」と人とは違う挨拶をすることで、後で見たときにふわっと漂う香りで顔を思い出してもらえます。
ビジネスシーンでの差別化や、マーケティング施策の一環として、香り印刷を活用してみませんか?ぜひ、商品ページから製品の一覧をご覧ください。
香り印刷ドットコム
「香り印刷ドットコム」は、久保井インキの香料インキを使った印刷で、ラベンダーや石鹸などの心地よい香りを印刷物に付与するサービスを提供しています。
このインキには目に見えない小さなカプセルの中に香りが包まれており、印刷物の表面を軽く擦ることによりマイクロカプセルが割れることで、香りが漂います。カプセルが割れない限り、香りは相当期間持続するため、長期間の使用が可能です。
「香り印刷ドットコム」は、弊社が持つ香料インキのノウハウと経験を活かし、オリジナルの香り作りにも対応しています。香りを通じた顧客との新しいコミュニケーション方法をお探しの方は、ぜひご検討ください。
※「香り印刷ドットコム」はこちら
香りビジネスは身近な存在となりつつある
香りビジネスは近年、急速に拡大しており、私たちの日常生活にも浸透しつつあります。従来の香水や芳香剤だけでなく、店舗の空間演出やブランディング、マーケティングなど、ビジネスのあらゆる場面で香りが活用されるようになってきました。
例えば、高級ホテルやアパレルショップでは、独自の香りを空間に漂わせることで、ブランドの世界観を強化し、顧客の記憶に残る体験を創出できます。不動産業界では物件の内覧時に心地よい香りを演出することで、購買意欲を高める取り組みも行われています。
このように、香りは単なる「良い匂い」を超えて、ビジネスの成果に直結する新たな要素として認識されるようになってきたのです。今後も技術の進化とともに、香りビジネスの可能性はさらに広がっていくでしょう。
【関連記事】香りビジネスとは?企業にも取り入れられる匂いの未来と市場規模
香り業界の市場規模
香り業界の市場規模は年々拡大しており、世界的に見ても成長産業です。フレーバーとフレグランスを合わせた世界の香料市場は、2021年には375億ドルに達し、2030年までには449億ドルに成長すると予測されています。
今後は、デジタル香り市場も新たな成長分野として注目され、オンライン購入前に香りを体験できる技術や、香りのデジタル化技術の開発も進むでしょう。
【関連記事】香りの市場規模は?業界別の市場とビジネスへの必要性も紹介
よくある質問

最後に、香料会社や香りビジネスに関して、多くの方が疑問に思われる点について、以下でQ&A形式で解説します。
香料メーカーで大手はどこですか?
世界的な香料メーカーの大手としては、米国のIFF(インターナショナル・フレーバーズ&フレグランス)、スイスのGivaudan(ジボダン)、ドイツのSymrise(シムライズ)が「ビッグ3」として知られています。IFFは2021年にデュポンのニュートリション事業を買収し、世界香料メーカーとなりました。
日本国内では、高砂香料工業、長谷川香料、小川香料が三大メーカーとして業界をリードしています。高砂香料工業は日本企業の中で唯一、世界のトップ10に入る規模を持ち、グローバルに事業を展開しています。
香料会社で働くには何の資格が必要ですか?
香料会社で働くために必須の資格はありませんが、化学系の学位(有機化学や食品化学など)を持っていると有利です。研究開発部門では修士号や博士号を持つ人材も多く活躍しています。
調香師(パフューマーやフレーバーリスト)は、多くの場合、社内トレーニングを通じて育成されます。品質管理職であれば、ISO関連の資格(ISO 9001やISO 14001など)や食品安全に関する資格(HACCP、食品衛生管理者など)が役立つでしょう。
日本の香料会社の世界シェアはどのくらいですか?
日本の香料会社の世界シェアは、全体で見ると約10%程度と推定されています。その中でも高砂香料工業が最大手であり、世界のトップ10入りを果たしている唯一の日本企業です。
世界市場では欧米の大手メーカー(IFF、ジボダン、シムライズなど)が上位を占めていますが、アジア市場においては日本企業が比較的高いシェアです。日本国内や東アジア市場では、日本の香料会社が地域の食文化や嗜好に合わせた製品開発力を強みとしています。
香料会社はどのような企業と取引していますか?
香料会社は、以下のようなさまざまな業種の企業と取引を行っています。
- 食品・飲料メーカー(菓子、飲料、冷菓、調味料など)
- 化粧品・日用品メーカー(スキンケア、ヘアケア、洗剤など)
- 製薬会社(医薬品、健康食品など)
- 香水ブランド(高級香水、大衆向け香水など)
大手の香料会社は、グローバル企業との長期的な取引関係を構築していることが多く、新製品開発の初期段階から協力して香りの開発を行うケースも少なくありません。近年では香りマーケティングの広がりにより、店舗の空間演出や、ブランドイメージに合わせた香りの開発などの需要も高まっています。
まとめ
香料は私たちの日常生活に深く浸透しており、食品から化粧品、医薬品まで幅広い分野で活用されています。日本には高砂香料工業、長谷川香料、小川香料、曽田香料、稲畑香料といった歴史ある香料メーカーが存在し、それぞれが独自の強みを持って国内外で事業を展開しています。
久保井インキのような香料技術を持つ企業も、「香りの印刷所 プルースト」や「香り印刷ドットコム」といったサービスを通じて、ビジネスシーンでの差別化やマーケティング施策に香りを活用する方法を提案しています。弊社の香り印刷サービスを活用して、香りの持つ可能性を最大限に引き出してみませんか?興味があれば、ぜひ下記ページをご覧ください。
香りの印刷所プルースト編集部
この記事は、香りの印刷所プルーストを運営している久保井インキ株式会社のプルースト編集部が企画・執筆した記事です。
香りの印刷所プルーストでは、香りの印刷をテーマにお役立ち情報の発信をしています。