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香りの仕事とは?向いている人は?代表的な12種類や必要資格まで解説

香りの仕事は、調香師(香りを作る専門家)やパフューマー(香水作りのプロ)といった専門職から、販売スタッフや営業職まで実に多様です。そして、市場規模は年々拡大しており、将来性も期待できる成長分野でもあります。
本記事では香りの仕事に関する全体像、必要なスキルや資格、未経験からの転職方法について詳しく解説します。自らの興味のある分野を見つけ、資格取得や情報収集をはじめるきっかけとしてください。
香りの仕事とは?
香りの仕事とは、香料(香りの原料)の開発・製造・販売・マーケティングなど、香りに関連するあらゆる業務を指します。主な領域としては、以下が挙げられます。
- 香料開発・研究
- 香料製造・品質管理
- 香水・化粧品販売
- アロマ・セラピー関連
- 香料営業・マーケティング
- 香りの空間演出
- 香り関連メディア・教育
香料市場は2024年時点で世界規模約5兆円に達し、日本でも年間約3000億円の市場規模を持つ成長産業です(※)。また、ステイホーム需要や健康志向の高まりにより、アロマテラピーやフレグランス商品の需要も拡大しています。
近年では、メタバース(仮想空間)やVR技術(バーチャルリアリティ技術)との融合など、新しい香り体験の可能性も広がってきました。市場規模にご興味がある方は、以下のページからご覧ください。
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香りの仕事は何がある?代表例を紹介

香りに関する仕事はその急速な広まりを受けて、専門的な技術職から一般的な事務職まで幅広くあります。ここでは、代表的な12の職種を詳しく紹介します。
パフューマー(香水調香師)
パフューマーは、香水や化粧品、洗剤などの香りを創り出す専門職です。数千種類の香料素材を組み合わせて、ブランドのコンセプトに合った独創的な香りを開発するのが仕事です。
調香師(パフューマーやフレーバーリスト)と呼ばれる専門家を擁し、独自の香りを作り上げる自社のノウハウも活用して、日々新しい香りの可能性を探求しています。大学で化学や薬学を学んだ後、香料会社で修行を積むのが一般的で、フランスなど海外での活動も視野に入れられる仕事です。
フレーバリスト(食品香料調香師)
フレーバリストは、食品や飲料、お菓子などに使用する香料を調合する専門家です。天然香料と合成香料を巧みに組み合わせ、おいしさを引き立てる香りを創造します。
日本では食品メーカーや香料会社で活躍の場があり、新商品開発において人材の需要があります。食品業界は常に新商品開発を行って顧客の関心を集めているため、フレーバリストの仕事は安定的な就職・転職先です。
エバリュエーター(香り評価専門家)
エバリュエーターとは、調香師が作成した香りを評価し、商品化に向けた方向性を決める香りのプロデューサーのことです。主に、香料会社や化粧品メーカーで市場トレンドを分析し、消費者ニーズに合った香りのコンセプトを企画立案します。
また、調香師に対する具体的な指示出しも行い、香り開発プロジェクトの成功を左右するポジションを担います。香料の専門知識に加えて、マーケティング力やプレゼンテーション力も必要な仕事です。
香料研究開発者
香料研究開発者は、新しい香料素材の開発や既存香料の改良を行う研究職です。大学や企業の研究所で、化学合成や天然物抽出技術を駆使して香料を生み出します。
主に、環境に優しい香料や長時間持続する香料など、時代のニーズに応える技術開発を担当しています。博士号を持つ研究者も活躍している領域であり、学会発表や特許出願なども業務の1つとなります。
品質管理・分析担当者
品質管理・分析担当者は、香料製品の品質維持と安全性確保を担う専門職です。ガスクロマトグラフィー(成分分析装置)などの分析機器を使用して、香料の成分分析や品質検査を実施します。
簡単にいえば、原料から最終製品まで、すべての工程で厳格な品質管理を行い、消費者に安心・安全な香料を届ける責任を担う仕事です。理系の方が従事先として選びやすく、知識と細心さが業務の遂行に求められます。
フレグランスアドバイザー(販売職)
フレグランスアドバイザーは、百貨店や専門店で香水や化粧品の販売を行う接客のプロです。お客様の好みやライフスタイルをヒアリングし、最適な香りを提案するのが主な仕事です。
香りの特徴や使い方をわかりやすく説明しつつ製品を売る仕事であるため、接客スキルと香りに関する幅広い知識が必要です。また、専用の資格取得によってスキルアップも可能で、未経験からでもはじめやすく、香りが好きな人にとって入りやすい仕事となります。
香料会社営業職
香料メーカーの製品を化粧品会社や食品メーカーに提案・販売する営業職も、香りに関する仕事です。顧客企業の商品開発担当者と密接にコミュニケーションを取り、ニーズに合った自社の香料に関するサービスを提供します。
新規開拓から既存顧客のフォローまで幅広い営業活動を行い、会社の売上に直接貢献する仕事でやりがいを感じやすい仕事です。香料の基礎知識とコミュニケーション力を基盤に、技術者との橋渡し役としても活躍できます。
香りマーケティング・企画職
香りマーケティング・企画職は、香り関連商品のマーケティング戦略を立案・行う仕事です。市場調査や消費者分析を行い、新商品のコンセプト開発やプロモーション計画を策定します。
近年では香りをマーケティングに取り入れる動きがみられており、若者向けであればSNSやWebマーケティングを活用した販促活動も担います。データ分析力と創造性を併せ持ち、香りの魅力を消費者に伝える役割を担いたい方にぴったりの仕事です。
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アロマ空間コーディネーター
アロマ空間コーディネーターは、ホテル、店舗、オフィスなどの空間に最適なアロマを提案・設置する専門職です。空間の用途や利用者層に合わせて香りを選定し、心地の良い環境作りをサポートします。
ときには、アロマディフューザー(香りを拡散する機器)の設置やメンテナンスも行うこともあります。先に触れた香りマーケティングの広がりにより、店舗の空間演出や、ブランドイメージに合わせた香りの開発などの需要も高まっているため、ぜひ注目したい職種です。
香料会社の事務職
香料会社の経営を支える事務職として、経理、人事、総務などの業務を担当するのも立派な香りに関する仕事です。直接的に香料開発に関わるシーンは少ないですが、研究者や営業スタッフが働きやすい環境を整備する役割を果たしています。
香料業界特有の業務フローや商習慣を理解し、会社運営を円滑にサポートする縁の下の力持ち的存在です。あまり資格の取得や研究職に興味がない方であっても、挑戦しやすい職種です。
香り関連メディア・ライター
香水やアロマに関する記事執筆、商品レビュー、業界情報の発信を行うライター職も仕事の1つです。主に、Webメディアや雑誌、カタログなどで香りの魅力を文章で表現します。
香りの専門知識と文章力を活かせば、フリーランスとしても活動できます。最近ではYouTubeやInstagramなどのSNSでの情報発信も視野に入れられ、新しい働き方も選択できる職種です。
インキ・印刷会社の社員
少し変わり種ではありますが、香り印刷という特殊な技術を扱う企業で働く選択肢もあります。例えば弊社、久保井インキ株式会社のプルーストでは、印刷物に香りをつける香り印刷技術を提供している会社です。
こうした関連する技術を有した会社で働く方法も、香りに関する仕事を見つける良いきっかけとなります。弊社に興味があれば、以下のページをぜひご覧ください。
【関連記事】採用情報 | 久保井インキ株式会社
香りの仕事に向いている人の特徴7選

では、香りの仕事で成功するためには、どのような能力や特性が必要なのでしょうか。以下では、ここまでに紹介した職種に共通して、「向いている人」の特徴を解説します。
香りの違いを感じ取れる人
まず、香りの仕事では微細な香りの違いを正確に識別する能力が必要です。天然香料と合成香料の違いや、香りの濃度変化を敏感に察知できなければ製品の開発は難しくなります。
難しく感じてしまうかもしれませんが、嗅覚に個人差があっても訓練によってある程度まで向上できます。興味があれば日常的にさまざまな香りに触れ、嗅覚を鍛える習慣を持ってみてください。
香水・アロマ・香料に強い興味がある人
研究職系を仕事として選ぶのであれば、香りに対する純粋な興味と探究心が仕事への原動力となります。新しい香りに出会うその経験を楽しみ、香りの歴史や文化的背景についても学び続ける意欲は何よりも代えがたい素質です。
具体的には、趣味として香水収集やアロマテラピーを楽しんでいる人などが該当します。香りへの情熱があれば、専門知識の習得も苦になりにくく、長期的なキャリア形成につながります。
トレンドへの関心が高い人
香りの世界でもファッションと同様にトレンドが存在し、常に変化しています。そのため、SNSや海外の香り情報をチェックし、新しいトレンドを敏感にキャッチする能力は仕事に向いている人の特徴として挙げられます。
マーケティング部門であれば、消費者における香りの嗜好の変化を先読みし、時代に合った香りを提案できる人材が重宝されます。Z世代(1990年代後半〜2000年代生まれの世代)の香り選びの特徴や、香料への関心など、社会情勢と香りのトレンドの関係性を理解する姿勢も大切です。
芸術的なセンスを持つ人
香りの調合や商品企画においては、芸術的な感性と創造力が役割を果たします。香りを音楽や絵画のように捉え、感情や記憶と結びつけて表現できる人が向いています。
色彩感覚や美的センスが香りの世界観創造に活かせるケースもあり、独創性を持ちながらも、市場ニーズとバランスを取れる柔軟性を持っている方にもぴったりです。もし、アート作品の鑑賞や創作活動の経験があれば、香り開発においても大いに役立ちます。
集中力・持続力がある人
香料の調合作業や品質管理業務では、長時間の集中を要する細かい作業が多くあります。1つの香りを完成させるまでに何度も試行錯誤を繰り返し、根気よく取り組む持続力は不可欠な素養です。
また、嗅覚疲労(香りを嗅ぎ続けることで感度が鈍る現象)を避けるため、適切な休憩を取りながら効率よく作業する時間管理能力も求められます。品質へのこだわりと責任感を持って、業務に取り組む姿勢はどの業界であってもアピールポイントになります。
表現力・コミュニケーション力がある人
香りは目に見えない商品のため、その魅力を言葉で表現する能力はあると良い特徴です。お客様や同僚に香りの特徴をわかりやすく説明し、共感を得られるコミュニケーション力にも非常に貢献します。
実際、販売職では顧客との信頼関係構築が売上に直結し、開発職では他部署との連携が不可欠です。こうしたコミュニケーション能力に加え、プレゼンテーション能力や語学力もあれば、海外展開やグローバル企業での活躍機会も広がります。
体力・健康管理ができる人
香りの仕事では、嗅覚を常にベストコンディションに保つ必要があり、体調管理が極めて重要です。風邪や鼻炎などで嗅覚が鈍ると業務に支障をきたすため、日ごろから健康維持に気を配れる方が向いています。
加えて、強い香料を扱う環境で働くその性質上、適度な体力と免疫力を要するケースもあります。普段から禁煙や適度な運動などに敏感で、嗅覚に悪影響を与える要因を避ける生活スタイルを過ごしている方はぜひアピールしてはいかがでしょうか。
香りの仕事に必要な資格・スキルは?

香りの仕事に就くために必須の資格はありませんが、以下の資格やスキルがあると有利です。
- 日本調香技師検定
- アロマテラピー検定
- フレグランスセールススペシャリスト
- 臭気判定士(国家資格)
また、スキルであれば以下が該当します。
- 化学・薬学系の学歴・知識
- 外国語スキル(英語など)
- コミュニケーション能力
- マーケティング知識
いずれにおいても、自らが目指す業種で求められている資格・スキルを持っているかをアピールポイントを探す視点にしてください。専門学校で勉強したり、実際に働きながら知識を付けたりするのが一般的なため、実務経験を積みながらスキルアップを目指す方法も有効です。
【関連記事】香り・匂いの資格は何がある?フレグランスを仕事に取り入れよう
香りの仕事に関するよくある質問(FAQ)
最後に、香りの仕事について多く寄せられる質問と回答をまとめました。
香りの仕事に将来性はある?
香り業界の将来性は明るいといえます。香りの市場規模は年々拡大している状況で、世界の香料市場は年平均4〜5%の成長を続けています。
健康志向の高まりによりアロマテラピー市場も拡大し、ウェルネス産業(健康・美容・癒し産業)との融合も進んできました。今後は、メタバースやVR技術と香りの組み合わせなど、新しい技術革新も期待され、これまでにない香り体験の創造が可能になると予想されます。
調香師の平均年収はいくらですか?
調香師の平均年収は、厚生労働省のJob tagによると約600万円です(※)。ただし、経験年数や勤務先企業の規模、専門分野によって異なります。
例えば、新人の頃は300〜400万円からスタートし、経験を積んで独立した調香師になると1000万円を超える収入を得るといった具合にあなたのスキルセットでも異なります。大手香料会社の上級調香師や、有名ブランドと契約するフリーランス調香師は、さらに高い収入を目指すというのも可能です。
香りが好きな人におすすめの仕事は?
フレグランスアドバイザーは未経験からでもはじめやすく、香水への愛情があれば接客スキルは後から身につけられます。百貨店での研修制度も充実しており、基礎から学べる環境が整っているためです。
パートタイムからスタートして正社員を目指すといった働き方も可能で、香りが好きという気持ちを直接活かせる職種です。また、アロマ空間コーディネーターも、香りへの興味と感性を活かせるおすすめの職種となります。
匂い系の職業にはどのようなものがありますか?
匂い系であれば、調香師・パフューマー・フレーバリストなどが代表的な職業として挙げられます。高い専門性と創造性が求められる花形職種ともいわれる領域です。
近年では、メタバース空間用の香り開発や、VR体験と連動した香り演出を手がけるデジタル香り技術者も登場しており、技術の進歩とともに新しい職種も生まれています。世界的な香料メーカーの大手としては、米国のIFF、スイスのGivaudan、ドイツのSymriseが「ビッグ3」として知られ、こうした企業での活躍も視野に入れられます。
【関連記事】香料の会社はどこがある?主要メーカーや事業領域・新たな香りビジネスも解説
まとめ
香りに関する仕事は、調香師やパフューマーなどの専門職から販売・営業・事務まで多岐にわたり、文系・理系を問わずさまざまな人材が活躍できる魅力的な業界です。未経験からでも資格取得や専門学習を通じて参入可能で、アロマテラピー検定から日本調香技師検定まで段階的なステップアップが図れます。
市場規模は継続的に成長しており、将来性も十分に期待できます。健康志向の高まりやデジタル技術との融合により、香りビジネスはさらに広がっていく見込みです。
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香りの印刷所プルースト編集部
この記事は、香りの印刷所プルーストを運営している久保井インキ株式会社のプルースト編集部が企画・執筆した記事です。
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